第28回 住まいのメンテナンス③家の耐震性を高めよう

住宅の耐震性

――マイホームに劣化が見つかった場合には、早めの対応が必要です。メンテナンスの際、気になる個所があれば一緒にリフォームすることで工事費用が抑えられます。近年、住まいの防災性や省エネ性の向上、快適性を高めるリフォームが増えています。今回は防災性を高めるために大切な住まいの「耐震」について紹介します。

 

防災知識クイズ
住宅の耐震性がわかる「耐震等級1」とは?
①法律で定められている耐震性の最低ランク
②震度6強~7レベルの1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しない強度
③構造計算を行い地震に強いことが証明された等級

※クイズの答えは本文中にあります。

 

1.住まいの耐震性を知る方法

住宅の耐震性

●既存住宅の場合

すでに建てられている住宅の耐震性は、建築時期によって異なります。

1981年6月1日より前に建てられた住宅の場合は、旧耐震基準で建てられているため、耐震性が不十分な場合があります。

1981年6月1日以降に建てられた住宅(建築確認が取れた日が6月1日以降の場合)は、新耐震基準に合わせて建てられているため、震度6強から震度7程度の揺れでも建物が倒壊しない基準になっています。

1995年の阪神・淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したため、2000年の建築基準法の改正では、耐震基準がより厳しくなりました。

●新築住宅の場合

これから住宅を建てる場合、耐震性を知る方法に「耐震等級」があります。

耐震等級には1~3のランクがあり、法律で定められている最低ランクは「耐震等級1」。「耐震等級1」は、「震度6強相当の地震が来ても家が倒壊・崩壊しない程度」というレベルです。

法律を守って家を建てても、大きな地震が来たら大切なマイホームが傾いてしまう可能性もあるということ。傾いてしまうとせっかく建てた家に住めなくなる恐れがあるのです。
 

【防災知識クイズの答え…①】
耐震等級1は、法律で定められている耐震性の最低ランクです。耐震等級は1~3まであり、もっとも高いレベルが耐震等級3、等級1の1.5倍の地震力に耐えられる強度です。耐震等級3は、消防署・警察署などの建物の耐震性と同等の基準となります。

2.耐震性能の調べ方

住宅の構造
2階建ての木造建築物では、構造計算は、一般的に「壁量計算」という簡易的な方法が採用されています。壁量計算は、地震の揺れに対してどのくらいの壁量が必要かを計算するものです。

現在、2階建て以下の木造住宅など(※)では、構造上の問題がないか、強度は問題ないかなど、構造計算については、建築士の判断にゆだねられています。確認申請の書類の提出が不要のため、第三者のチェックがなく家を建てることができます。

しかし、地震などによる倒壊リスクや、構造強度が明らかになる事案が次々と発生したことにより、2025年からは2階建ての木造建築物でも確認書類の提出が必要になります。
そうは言っても計算方法は、従来どおり壁量計算という簡易な計算のままでも可能。

本当に耐震性の高い住宅を求めるなら、柱や壁がどれくらい強いのか、どのくらいの荷重まで耐えられるのか、細かな計算で住まいの耐震性をチェックする構造計算(許容応力度計算)がおすすめです。構造計算を行い、さらに耐震等級3の家を建てることが、安全性、防災性を考えると安心と言えます。

(※)2階建て以下かつ、床面積が500㎡以下、軒高9m以下、高さ13m以下のもの。
 

3.住まいの耐震性を上げるために

住宅の耐震性

●既存住宅は耐震診断を

新築の場合は、建築の際に構造計算を行い耐震性能の高い住まいを建てればいいのですが、既存住宅の場合、耐震性を上げるにはどうすればいいのでしょうか?

まずは、耐震診断を受けること。オンラインで耐震診断をすることができるので、ご自宅の状況を確認してみましょう。

⇒ 誰でもできるわが家の耐震診断

問題が見つかったり、気になるところがある場合には、専門家による耐震診断がおすすめです。

メンテナンスを定期的に行うことで、住まいの劣化に早く気がつくことができます。特に、基礎や柱、梁などの構造部材は建物を支える重要な場所なので、点検で問題を早めに見つけることが重要です。

●既存住宅の耐震改修

耐震診断を受けた上で、耐震改修が必要となった場合に行われる一般的な木造住宅の耐震改修の内容をご紹介します。耐震改修にはさまざまな方法がありますが、今回は基礎・接合部・壁・屋根についてご紹介します。

・基礎

基礎にひび割れが入っている場合は補修工事を行います。鉄筋が入っていない場合は、基礎に新しくコンクリートを流し込み、鉄筋でつなぐなどの方法で補強するのが一般的です。

・接合部

柱・梁・筋交いなどの接合部が腐食などで傷んでいた場合は、金物で補強して強度を高めます。

・壁

柱と柱の間に筋交いを設置するなどし、強度を高めます。

・屋根

屋根は軽い方が家全体の耐震性は高くなります。重い瓦屋根の家なら、軽量な屋根材に交換する方法などがあります。
 

耐震改修の補助制度

耐震診断や耐震改修については、地方自治体で補助金や助成金を支給している場合があります。お住まいの市区町村のホームページや「住宅リフォーム支援制度検索」などで確認をおすすめします。

⇒ 地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和4年度版)
 

4.「住宅性能表示制度」を利用する

住宅の耐震性
これから建てる家が地震に強いのか。住宅の性能を客観的に評価できる仕組みが住宅性能表示制度です。

●住宅性能表示制度

住宅性能表示制度とは、2000年(平成12年)4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて施行された制度のこと。
住宅性能表示制度を利用すると、住宅性能評価機関が第三者の立場で性能をチェックしてくれます。住宅性能評価書を取得することは、安全な住まいという証明になります。

●耐震等級3の家

「耐震等級3」は、住宅性能表示制度で定められた耐震性の中でも最も高い耐震等級です。
住宅性能表示制度を利用する場合には手続きが必要なので、家を建築してもらう住宅会社に相談してみましょう。
 

【ポイント】
既存住宅の耐震性は、建築時期を確認する
簡単な耐震チェックはオンラインでもできるのでまずは自身で確認を
新築住宅の場合は、住宅性能表示制度を利用し性能をチェックするのがおすすめ
不具合がある場合は、修繕時に耐震改修リフォームなど同時にすることで工事費用が抑えられることも

 

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